翌日になってもおばさんの声は耳の中に張り付いて消えることがなかった。


その声は授業中でもトイレの中にいるときでも聞こえてきて、浩はその都度震え上がる。


もう勉強ところではないと思い始めたとき、ようやく放課後になってくれていた。


「あんなに怖い話家さんなんていないよなぁ」


ブツブツとつぶやきながら一人で公園へ向かうと、他の7人はすでに東屋に集合していた。


浩は慌てて空いているベンチに座る。


「遅かったな浩。逃げたのかと思ってたぞ」


実がふんぞり返ってそう言うので「本当は逃げたかったよ」と、ため息交じりに答えた。


「それでも怖い話は準備できたんだろう?」


直人に聞かれて浩は頷く。


確かにとびきり怖い話は準備できたけれど、自信はなかった。


あの話はプロだったおばさんだからこそ怖く話すことができたんだ。


素人の自分が話してみんなを怖がらせることができるかどうかはわからない。


そこまで考えて浩は左右に首を振った。


今回の目的はみんなを怖がらせることじゃない。