ひとり暮らしだったこともあって、毎日ルルちゃんルルちゃんって声をかけているのを近所の人は聞いていたんだって。


だけど結局ルルが見つかることはなくて、その翌週、前の家に暮らしていた若い夫婦が引っ越しの挨拶をしに来たんだ。


「どうも、お世話になりました」


「若い人が引っ越すと寂しくなるわね」


「子供が過ごしやすい場所が一番ですので。それでこれ、つまらないものですが」


女性がそう言って渡してきたのはタッパーで、中には手作りの肉じゃがが入っていた。


手作りのものを配るなんて今どき珍しいと思いながらも、3年ほど隣で暮らしていた夫婦からの贈り物を喜んで受け取った。


「そういえば隣のご夫婦の子供、最近はあまり泣き声を聞かなくなったわね。前はよく泣いていて、それに合わせてルルちゃんが吠えていたけれど」


女性はそう思いながら、夕飯に肉じゃがを温めて食べ始めた。


「あら、おいしい」


それは本当に美味しかったんだ。