2人だけの秘密の話なんかがあるときは、よく玄関からではなく庭から直接声をかけたりする。


今日の相談事は悪いことではないけれど、自分の母親の反応もあったから、できるだけ大人には知られないようにしたほうがよさそうなので、庭から声をかけることにしたのだ。


「兄ちゃんいないの?」


返事がないので窓に近づいて更に声をかける。


しばらくその場で待っていると部屋の中からゴトゴトと物音が聞こえてきて、ようやく窓が開いた。


「よぉ直人。来たのか」


出てきたのは髪の毛を短く刈り、爽やかな笑顔を浮かべた剛だった。


剛は今年中学3年生で受験生だ。


「剛兄ちゃん、あのさぁ!」


元気よく話をしようとした直人はふと剛の目が充血していることに気がついて口を閉じた。


マジマジと剛の顔を見つめると「なに見てんだよ」と、下を向いて顔を隠されてしまった。


「もしかして剛兄ちゃん、泣いてた?」


「泣いてなんかないって」