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仕方なく約束場所へやってきた和輝は交番前で大きく手を振っている実の姿を見つけた。


周囲よりもはるかに目立っていて恥ずかしい。


一瞬気が付かなかったフリをしてそのままやりすごそうかと思ったが、実の方から駆け寄ってきたので逃げられなくなってしまった。


「手ぇ振ってんだから反応しろよなぁ!」


バンバンと痛いほど背中を叩く実に顔をしかめる。


なんだか今日はやけにハイテンションみたいだ。


なにかいいことでもあったのかもしれない。


「なにかいいことでもあったのか?」


そのまま質問をしてみると、実は楽しげにキラキラと目を輝かせはじめた。


それで嫌な予感を覚えた。


実にとっては楽しいことでも、こっちからすれば全然楽しくないことだって沢山ある。


今日はあの電話のときから楽しくないことのほうだとわかっていた。