「なにかある?」


「あるといえばあるけど。そんなこと聞いてどうするの?」


「友達と怖い話の発表会をすることになったんだ。部活動みたいなもん」


嘘はついていない。


部活動とは違うけれど、友達の前で披露することは本当だ。


「どうして怖い話の発表会なんてするの? どうせならもっと楽しい話にすればいいのに」


直人たちの両親も怖い話を聞きたいと言うと渋い顔をしたと言っていた。


どこの親でも同じなのかもしれない。


やっぱり母親から聞き出すことは難しそうだ。


部屋の空気が険悪になる前に話を切り上げようとしたが、「まぁ、いいけど」と言われて和輝は思わず「え?」と聞き返していた。


「この街にまつわる怖い話が聞きたいんでしょう?」