レンジでお弁当があたたまるのを待っている母親の背中へ向けて言う。


「そうね。和輝はしっかりものだし心配しなくてもいいのかもしれないね。でもやっぱり心配なのよ。家で1人きりにしちゃってるし」


そういう背中がなんだか小さく見えて和輝の胸はズキンッと傷んだ。


母親は今仕事と家の両立のために一生懸命で、どっちも完璧にこなしたいと思っているのかもしれない。


だけどそんなの無理だ。


両方とも100点満点でできる人なんていない。


「オレは、オレのことよりも仕事を頑張ってほしいと思ってるから」


少しぶっきらぼうな言い方になってしまったけれど、ちゃんと伝えることができた。


母親が驚いた表情をして振り向く。


ずっと、母親の仕事を応援していた。


1人で寂しいと感じるときもたまにはあるけれど、それでももう小学5年生だ。


両親の迷惑にならないように気配りすることだってできる。


だからもう少し、母親には家にいる間くらいは肩の力を抜いていてほしかった。


「なぁになまいきなこと言ってるのよ」


母親は茶化すようにそう言い、心底嬉しそうに微笑んだ。