幽霊とかよりも、現実に起こった事件なんかのほうがいいかもしれない。


「う~ん、考えれば考えるほど難しいな」


直人はため息をつきつつベッドから起き上がった。


こうして1人でモヤモヤと考えていたって怖い話は近づいてこない。


自分の足で探しに行くしかないのだ。


直人はかばんの中から落書き帳とエンピツを取り出して階段を降りた。


キッチンからは味噌汁のいい香りが漂ってきている。


「お母さん、ちょっと出かけてくる」


「あら、どこへ行くの?」


お玉でお鍋をかき回していた母親はもう機嫌が直ったようで、笑顔で振り向いた。


直人はホッとして「隣の家」と答えて足早に玄関へ向かった。


隣の家に暮らしているのは直人のイトコだ。


毎日のように行き来しているし、近いから何時に出かけようが両親は心配しない。


今だって母親は返事もせずに鍋へと視線を戻してしまった。


「剛兄ちゃんなら、なにか知ってるかもしれない」


直人は期待に胸を膨らませて、すぐ隣の家へと向かったのだった。