「それじゃさっそく教えてやろう。とっておきの怖い話を……」


それは実が初めてきく、この街で起こった恐怖体験だった。


恭平の話し方が上手で、話の途中で何度も生唾を飲み込む。


次第に日が傾いてきたこともあって、なんだか全身が寒く感じ始めた頃、ようやく恭平の話は終わった。


聞き終えた実はふーと大きく息を吐き出して目を閉じた。


「どうだ? 怖いだろ?」


横を見るといたずらっ子のように笑う恭平の顔がある。


「それ、本当に起きた話なんだよな?」


「あぁ。そう聞いてる」


これなら先に話した3人に見劣りしない話ができそうだ。


「ありがとう恭平。俺、今日はもう帰るよ」


家に戻り、今聞いた話を練習するつもりだった。