相手は必殺技を繰り出したところで、飯田のキャラクターは逃げるまもなく負けてしまった。


「あ～、悪いな。俺が声かけたから」


申し訳なさそうに頭をかく実に飯田は「別に大丈夫だよ」と、慌てて立ち上がった。


それでも実との身長差は大きくて、飯田は実を見上げる形になっている。


こころなしか実に声をかけられた飯田は顔色が悪くなっていた。


「それで、僕になにか用事？」


飯田は実の後ろの、更にずっと後ろにある出口へ視線を向けながら聞いた。


このまま走って逃げるには難しそうだ。


実を押しのけて真っ直ぐ出口へ向かおうとしても、途中でゲームの機械が立ちふさがっている。


学校内でジャイアン的存在である実に目をつけられた飯田は、ひたすらひきつった笑みを浮かべている。


実はそんなことには気が付かずに「お前さ、この街の怖い話とか知らねぇか？」と、質問していた。


「こ、怖い話？」


飯田の顔色が更に悪くなる。