「ちょっと、……まどかっ?どうして泣いてるの?」
急に姿を見せた上、泣いている彼に、どこか怪我でもしているのではないかと慌てて顔を覗き込んだ。
何だろう。彼の体が白く光ってとても眩い。
「まどか?」
ぼろぼろと、大粒の涙が薄茶の瞳からこぼれていく。
着物姿の彼が登場した時点で、これは死後の世界ではなく夢なのではないかと疑い始めたが、しかし、ここ最近立て続けに見ていた過去のピンク色の夢とは、また様子が違う。
そもそも、このような何もない真っ暗闇の中で、こんなになった彼の姿は、昔も今も記憶にない。
「まどか、本当に大丈夫?」
顔を寄せ、再度尋ねる。と。
「……んむっ!?」
突然重ねられた唇に、目を見開く。
一瞬で、頭の中が真っ白になった。
(ななななな……何!?)
思考が追い付かず、後ずさって逃げようとしたものの、腰に手を回され逃げ道を奪われた。
「…っ、ま………、…ぅ……」
「はっ…、たまおさん…、……たまおさん…っ」
制止しようと声を上げても、それは言葉になり切らずまどかに飲み込まれていく。
苦しくなって微かに唇を開けば、その間から温かい舌が滑り込んできた。
触れた熱に慌てて逃げようとした私のそれに気づき、もどかしげな表情をしたまどかが、私の後頭部と腰元に回した手に力を込めて自分の方に引き寄せる。
「や…っ、あ……」
寂莫とした暗い空間に似合わない甘い水音が響き、羞恥で頬が紅くなるのを感じる。
彼の熱が唇を通じて体中に巡っているかのようだった。
(まどかだ…。彼の熱を、私が間違えるはずない)
まだ混乱した頭で、それでも確信を得て彼の背中に両手を回せば、まどかはぴたりと動きを止めた。
そして。