「なぁ、たま。ごめん。…やっぱり、顔が見たい」

「え?」


突然の提案に目を見開く。


切なそうな声でそんなことを言われても、無理なものは無理だ。

いくら以前、この姿を見られているからと言って、そう何度も晒したい姿ではない。

雪のように色のない髪も、獣のように光る黄金の目も、とても醜いものだから。

私が普通の人とは違うという、証そのものだから。

まどかがすべてを忘れているなら、この姿のことも忘れたままでいてほしい。


「………………」


上手い返事の仕方が見つからず沈黙を守っていると、まどかはぽつりと呟いた。


「……俺から避けるようなことを言ったのに、虫がいいって分かってるけど…。見たいんだ。せめて、本当に一人でいても大丈夫なくらいなのか、確かめるだけだから」


自分の非を前置きにして頼み込んでくる彼の言葉に、胸が苦しくなった。


(避けるどころか、「嫌い」って言った相手を、責めることなく気遣うなんて)


やはり、彼はどこまでも底なしに優しい。……心配になるくらい。


「………だめ、か?」


いつまでも返さない答えに、彼の声に暗さが滲んだ。

しばらくして、


「……………分かった。俺、もう帰るから」

「っ」


ぱっと顔を上げ、思わず扉に手を触れる。


あまりにも沈痛な声音に、彼は今どんな表情をしているのだろうと心配になった。



……泣いては、いないだろうか。