「一目見た時からあなたの事が嫌いです」


俺にとって、死刑宣告にも等しい言葉を。


「私の視界に入らないでください」


なんの躊躇いもなく振りかざした。





…………永遠にも思える一瞬。


辺りは静まり返り、世界に二人きりになったように錯覚する。

そして。


「………………は?」


俺から出たのは、そんな一音だった。


彼女が目を丸くするのを見ながら、俺の心には膨大な数の感情が渦を巻いていた。


彼女に逢えた喜びや幸せ。

一方で、その彼女からのいきなりの暴言に対する驚き、困惑、哀しみ。


さらには。


「……俺、君に嫌われるようなこと、何かしたかな?」


俺が精いっぱいの笑顔で尋ねれば、彼女は小さく首を横に振って答えた。


「いいえ、強いて言うなら、存在が」

「……………」


(嫌いとでも?)


とうとう、俺の表情が凍りつく。

これ以上は、無理だった。


彼女に対する感情の中で、一番汚いものが、自分の内側からにじみ出てくる気配がした。

『宝物』に拒絶された、苛立ちと憎しみ。


「こっちのセリフだ、クソ女」

「………………」


大和にしか見せたことのない、外面を引きはがした表情で、悪意を吐き捨てる。


何故か同時に、自分の胸まで張り裂けそうなくらい痛くなった。

小さな声で落としたその呟きは、しかし、彼女を固まらせるには十分だったようだ。


(美人だからって、調子に乗りやがって)


イライラする。

目頭が熱い。


(性悪女なんか、こっちから願い下げだ)


唇を噛み締め、彼女を睨みつけると、その細い肩が震えた。