だから、いろんな感情が入り混じった膨大過ぎる感情をどうにかしたくて。

 “好き”も“恨み”も“痛み”も“苦しみ”も、全部を解消して頭をすっきりさせたくて。

 そして今自分が“存在している”ということを感じたくて。


 “わたしはもう、あなたの言葉なんて気にしない”

 ――そんな虚勢で取り繕って言い訳をして、気分転換と称してわたしは喫煙を始めた。

 その実、“あなたがいないから、わたしはこんなことになっているぞ”と、恨みったらしく復讐に近いような意図を含んだ、元カレを意識しまくった気晴らしに過ぎない。


 なんて哀れで滑稽で、醜いんだろう。

 我ながら自分に吐き気がした。


 ――こんなはずじゃ、なかったのに。


 そんな言葉が零れそうになって、わたしは封をするように唇を噛みしめる。

 すると俯いていた視界に、いつの間にか近づいていたらしい死神の黒い光沢のあるブーツが入ってきた。

 そして頭上から聞こえてきた言葉は、思いがけないもので――。