人間の視線を避けるように、近くの電信柱の影に隠れ人間の姿になった俺は、彼女がいる公園へと向かった。

 そこはブランコと滑り台しかない小さな公園で、大通りからも住宅街からも外れた位置にあるせいか、人間がいるのを見たことがない。

 彼女はブランコに腰かけ、人間の知識と技術の賜物をいじっていた。

 歩み寄って、その情報の固まりをのぞき込んでみると、ある人間との静止画のアルバムを流し見ては、誰かとの文字による会話を見返してを繰り返しているようだった。

「何してるんだ」

 そう声をかけたと同時に「うわぁっ」と驚きの声をあげ、彼女はその箱を隠すように胸に抱えた。

「ちょっと!! 勝手に人の携帯覗くの良くないよ!! というかその前に声かけて?!」

「なんで良くないんだ?」

「プライバシー!! 大事!!」

 “そういえばそんなのあったな”と思いながら、「次から気をつけよう」と返す。
 別に彼女が見られたくないと思うものを見ようとは思わない。

 俺の言葉に安心したのか小さく息をつくと、彼女はその携帯をパーカーのポケットにしまう。そして小さくため息をつくと呟くように言った。


「――感情を奪ってほしいって考えた元凶を見てた」