小さい私はなすすべもなくなってしまう。



「あーっ、もう可愛すぎる……っ。このまま食べちゃいたいくらいだよ」


「きゃっ! もうダメです!」



 私の精一杯の力でグイッと押し返すと、やっと離してくれた。

 もちろん、柊が本気で離そうとしなければ、私なんかの力で叶うはずがない。


 柊はいつも私の様子を見て、加減を調節してくるのだ。無理にしてくることは絶対にない。



「ご褒美タイム、もう終わり?」



 この声に負けてはダメだ。私は自分にそういい聞かせて、仕事に戻るように促した。



「あっそういえば美桜ちゃん、今度の休み暇?」


「もちろん暇ですけど? それよりも早く仕事をしてください」


「そう、良かった。じゃあその日は空けておいてね」



 何事もないふりをして私は返事をする。

 いつも突然のくせに、前もって空けておいてと約束してくるなんてめずらしい。


 もちろん、私だってその日が何の日か分かっていて空けてあるのだけれど……。



「何かあるんですか?」