全身が真っ黒な皮膚で覆われており、マントを羽織ったサタンが言う。彼は悪魔のトップに君臨しており、その戦闘力や魔力はそこらにいる悪魔と比べ物にならない。

そんなサタンに言われ、楽しく食事をしている悪魔たちから離れた場所にいたツヤに全員の視線が集まる。ツヤの前に置かれた料理は一口も手がつけられていない。

「もったいないぞ、こんなにうまいのに」

「喰わないなら俺にくれ！」

マモンとベルゼブブが言い、ツヤは何も言っていないのに皿が取られていく。

「体調が悪い……ってことはないわね。私たちは妖なんだから」

ベルフェゴールが警戒した目でツヤを見る。ツヤは、内心焦っているのを顔に出さないような心がける。

ツヤは鬼でありながら、人を喰えない。人を喰えない呪いにかかっているからだ。出された料理を一口でも喰べれば、その呪いが発動されてしまう。

「すみませんね、実はもう食事を済ませてあったもので」