「脱獄ってどうするの?」

イヅナが訊ねると、マチルダが説明する。

「あたしかケフェウス、もしくは誰かが出荷される時を狙う。出荷の日は警備が手薄になる。その時に二手に分かれる。一つは食用児全員を連れて農園の外に脱出するグループ、もう一つは出荷される仲間を救い出してゴブリンたちと戦うグループだ」

逃げるグループは実験室の奥にある隠し扉を通って外に出て、森の外まで一直線に走る戦うグループはゴブリンたちを可能な限り制圧し、逃げる。

「僕とマチルダはゴブリンたちと戦えるよ。その肉体に作り替えられているからね」

自信ありげに言うケフェウスだが、イヅナの胸には不安があった。アレス騎士団として妖と戦ってきた経験があるからだ。

ゴブリンなどの妖は、核を破壊しない限り永遠に死ぬことはない。そのことを知っているのは、アレス騎士団の人間だけだ。細胞は人間の倍のスピードで回復し、ゴブリンという低級の妖であっても普通の人間には苦しい戦いになるだろう。

考え込むイヅナに、「お願い!」とミモザは縋り付く。その瞳には涙が浮かんでいた。