「あ、あの！ツ……カヤさんの部屋に笛を隠したのはあなたたちなんですか？でも笛は全く音がしなかったんですが……」

「音は、あたしとケフェウスにははっきりと聞こえた。その笛は特殊な笛なんだ」

マチルダが言い、イヅナはますます訳がわからなくなっていく。

「と、特殊？」

「僕とマチルダはこの農園で生まれて、悪魔たちに実験されていた。そのおかげって言っていいのかはわからないけど、人間離れした身体能力や動体視力を手に入れてる。上の連中は僕らを「化け物」って言って、早く出荷させようとしてるけどね」

次に出荷されるのは僕かな、そうヘラリと笑って言うケフェウスにイヅナは目を見開く。何故、そんなに笑っていられるの？そう聞きたかったが、言葉は口から出てこなかった。

「私たち、脱獄を計画しているの。その仲間を集めるために、笛を食用児が連れ込まれるであろう部屋に隠した。……仲間になってくれない？」

ミモザに手を握られ、見つめられる。その目は本気だった。