ゴブリンたちの足音を聞きながら、イヅナは笛を握り締める。真夜中までがとても長く感じた。

「ハァ……。やっとこれで今日の仕事が終わりだぜ」

「ゴブリンだからって面倒な仕事は全部押し付けられて、本当やってられないな」

ブツブツと文句を言いながら、ゴブリンたちが歩いてくるのがわかる。真夜中だ、とイヅナは目を勢いよく開き、胸が高鳴るのがわかった。

「次の出荷はいつなんだ?」

「まだ未定だ。でも、メスは出産してもらわないといけないからまたオスだろ」

そんなことを話しながらゴブリンたちは歩いて行く。そして啜り泣く子どもの檻を「うるさいぞ!」と言いながら蹴り上げ、笑いながら牢を出て行った。足音が遠ざかっていくのを確認し、イヅナは笛を口に咥える。

イヅナは強く笛に息を吹き込んだのだが、掠れたような音しか聞こえてこない。予想していた高い音は出ず、壊れているのかと肩を落とした。

「これじゃあ、誰の耳にも届かないわね」