イヅナは服のポケットに笛をしまう。敵だと思っているツヤの目を盗み、捕らえられている子どもたちの誰かが笛を隠してくれたのだ。これは、関わることが未だにできていない子どもたちと話せるチャンスである。

「今夜、早速試してみましょう!」

イヅナは笛を服の上からそっと触れる。そしてツヤの淹れてくれたお茶を楽しみ、また捕われた食用児と鬼の職員に立場は戻った。



森に囲まれているこの農園は、夜はとても不気味である。

薄暗い牢の中は陽が沈むと一気に暗くなり、牢の出入り口にある蝋燭が唯一の光である。そして外ではフクロウなどの夜行性の動物の不気味な鳴き声が響き、それに驚いた子どもの誰かが泣く声がする。それが毎晩だ。

イヅナは床に横になりながら、真夜中になるのをジッと待つ。見回りをするゴブリンたちの動きで時計がなくても時間はわかるのだ。

(真夜中を過ぎると見回りはなくなる。見回りが終わってから笛を鳴らしましょう……)