「お前、俺の後から農園に入ったくせに偉そうだな！女だからって殴られないと思うなよ」

ゴブリンが怒りで顔を赤くし、拳を力いっぱい握り締めてツヤに殴りかかろうとする。男が女を殴ろうとしている時、普通ならばイヅナの口からは悲鳴や「やめて！」という声が出るだろう。しかし、ツヤがどのような行動に出るのかわかっているイヅナは顔を背けた。

殴りかかろうとするゴブリンは一瞬で床に叩き落とされる。何が起こったのかゴブリンが把握できない間に、ツヤの足は思い切り彼の腹を蹴り飛ばしていた。

「我々妖の世界は力が全て。年功序列なんて馬鹿な考えは人間しか持たない。お前、随分と人間みたいなことを言うんだな。……弱いくせに」

冷たく、それでいて馬鹿にするような笑みをツヤは浮かべ、痛みに苦しむゴブリンを見つめる。ゴブリンは苦しみながらも怒りは感じているようで、「お前……！」と悔しげに言うが、もう反撃することはできない。

「こいつを借りて行くぞ」