美琴は、はやる気持ちを抑えお気に入りの場所へと向かった。その場所は本殿の後ろにある細く長い階段を登った先にある。

 入口は木々が生い茂っており、その場所を知らない限り見つける事が難しかった。

 本殿の裏に到着した二人は、草木で隠れた階段を登っていく。長い石段はまるで空まで続いているようであった。この石段はどれくらい前から存在していたのだろうか。

 ひび割れが目立ち、両脇の草木は石段を隠していた。この世界の植物も人間の世界とさほど変わりがない。司が美琴を守るように草木をかき分け石段を登っていく。

 どれくらい登ったであろう。前方に階段の切れ目が見えたのだ。ようやく見えたゴールに、息を切らせた司は安堵した。

 部活で鍛えているとはいえ、こんなにも長い階段を登る体力はなかったのだ。

「はぁ、はぁ、やっと着いた・・・・・・。それにしても、美琴は疲れてないんだね?」
「えぇ、これでも神ですからねっ。疲れなんて感じないのですよっ」
「そ、そうなんだ。羨ましいよ、いくら体を鍛えても疲れがなくなる事はないからね」
「鍛えて・・・・・・いるのですか」

 美琴は吸い込まれるように、司の体を触り始める。首周りから腕お腹にそして足と、無我夢中で我を忘れ触り続ける。初めて触る人間の体。その感触は固く、引き締まっている感じがしたのだ。

「美琴・・・・・・? な、何をしている・・・・・・の?」
「はぅ・・・・・・こ、これは、ですね・・・・・・あの、その〜」

 美琴はあまりの珍しさに羞恥心を忘れていたのだ。司の呼び掛けに顔を真っ赤に染めると、勢いよくその場から退いてしまう。

 そして、その勢いのまま地面の石に躓き転んでしまったのだ。

「いった〜い。もぅ、何でこんな所に石なんてあるのよぉ」
「だ、大丈夫〜? 美琴は神様なのに、ドジだなぁ」
「べ、別にドジってわけじゃないのよ? ほら、石が足元にあったら、誰でも躓くにきまってるじゃないの」