「ねぇ芽衣!今日うちで何して遊ぶ?」

授業が終って帰りの会のあと、いつものように大志が芽衣に話しかけていた。

「…芽衣行かない。家に帰る」

「じゃあ芽衣の家で遊ぶ?」

「ううん、遊ばない」

ランドセルを背負ってとぼとぼと教室を出ようとする芽衣。

「待ってよ!一緒に帰らないの!?」

「いくぞっ」

立ち止まったままの大志に軽く蹴りを入れながら、今日1日中元気のなかった芽衣の後を歩いた。

一緒に帰らない、なんて選択肢がそもそもないんだから。家は隣だし、登下校はみんなでってルールがあるし、嫌でも帰り道は同じなんだから。これまた全く会話のない帰り道だったけど。

「「はぁ…」」

同じタイミングでため息をついてしまった。

芽衣は何にそんな凹んでんだ?
つーか苗字も違えば家だって違うんだから!

芽衣のとーちゃんとかーちゃんはいっつも仕事が忙しくて、怜にーちゃんとよくうちに預けられていた。だから、まぁ家は!うちでしょちゅうメシ食ってるし、うちで寝てるし、ほぼほぼうちが家みたいなとこあるけど!

だけど、たまにしか帰ってこないとーちゃんとかーちゃん、怜にーちゃんだって芽衣にはいるじゃないか!


“血繋がってねぇの!!!”


そんなにさみしそうな顔するなよ…

「…芽衣?今日とーちゃんが買って来てくれたどっかのチョコレートあるよ!」

「…いらない」

「芽衣チョコレート好きじゃん!」

「…好きじゃない」

家の前、自分の家に帰ろうとする芽衣を必死に大志が呼び止めていた。
チョコレートで釣ろうとしているところが我が兄ながら単純だ。

そんなこと気にも留めないで、芽衣は家に入って行ったけど。オレも自分の家に入った。