もう一度ソファーに戻ると、優志が空いていた反対側の芽衣の隣に座ってスマホを見せていた。気になって俺も覗き込む。

「あー!いつのまに俺のランキングを!」

スマホに映っていたのは今ハマってるゲームだった。それに熱くなってつい大きな声が出た。

「すごいでしょ、今家族の中で1位なんだよ」

優志が携帯の画面を指さしながら芽衣に自慢げに話している。

昨日までは俺が1位だったのに!寝る間も惜しんで得た1位だったのに!

鼻高々で話す優志、うんうんと芽衣が頷いて…

「すごいね!優志!」

がばっと抱き着いた。

「おいっ!!!」

条件反射で芽衣の肩を引っ張り引き剥がした。

「え!?」

優志も芽衣も俺も驚いた。

「奏志何!?」

「何って、お前っ!いきなり抱き着くとかっ」

「え?なんで!?」

「なんでって、男相手に急に抱き着くとか…!」

と、言ってハッとした。

織華ねぇーちゃんも正志にーちゃんも見てるし、なんなら結華ねぇーちゃんに至ってはニヤニヤと笑ってるし!江戸紫の爪立てながら笑ってる!!!

「男もなにも優志は弟じゃん」

「だからっ」

でも次の言葉が言えずにいた。みんなが俺の言葉を待ってるようで。

「僕めいちゃんの弟じゃないけどね」

全く俺の言葉を待ってなかった優志がサラッと答えた。

おう、まぁそれだ。そーゆうことだ。

「優志そんなこと言わないでよ~~~~!!!芽衣お姉ちゃんは寂しい!」

「めいお姉ちゃんなんて呼んだことないでしょ?」

「…あ、本当だ」

「ね?」

…うん、そうだ。そうゆうことだ。ちょっと違う気もするがそうゆうことだ。

「弟と思ってたのは私だけだったのか…!」

芽衣の別スイッチが入ったけど。

「確かに私は結華お姉ちゃんだし、正志お兄ちゃんだし、織華ねぇーちゃんだけど、奏志は怜お兄ちゃんのこと怜くんって呼ぶもんね!?」

「お、おう!そうだな!」

俺と優志の真ん中に座る芽衣はあっち見たりこっち見たりと騒がしい。

「そーゆう意味だったのか…」

「どーゆう意味だったんだ?てゆーか芽衣が言ったんだぞ、怜くんて呼べって!」

「は?なにそれ?」

「は?覚えてねぇの!?」

首をかしげ、何言ってんの?と眉にしわを寄せる芽衣。

いや、お前が言ったんだよ!なんで俺が意味不明みたいな顔してんだよ!!

10年前、ハッキリちゃんとそう言ったんだよ!!!