上手く仲直りをさせてあげることができないまま時間だけが過ぎたカラオケからトボトボと歩く帰り道。

空気の悪いままもうすぐ家に着いてしまう。息を吸うのも重苦しい。

「…ねぇ、なんか喋ってよー。寂しいじゃんー」

「よく言うな、散々避けてたお前が!」

奏志にめちゃくちゃ正論で返された。
なんだろう、紘一パパとおんなじだ。前にバイトのことで相談した時の紘一パパと。

「う…っ」

「あんな堂々と避けてたくせによ!」

「そ、それは…ごめんっ」

それを言われたらそうだし、急に奏志に喋ってなんて言えた立場じゃない。むしろ私の方があからさまで…

「避けられるようなことをしたのはそっちなんじゃないの?」

ずっと黙っていた大志が口を開いた。

「はぁ?」

「だってそうだろ?自業自得だ」

「てめっ、何もできねぇーお前に言われたくねぇな!」

「後先考えてない奏志と一緒にすんなよ!」

「んだとっ」

この流れはダメ!始まっちゃう!

その前に止めないとっ

「ストーーーップ!」

向き合って睨み合う2人の胸の辺りをなだめるように抑えた。

このままだとよくない!絶対止められなくなる!またケンカしちゃ…


ん?

あれ、ちょっと待って?

「え、待って!何その話!?」

頭の中でぐるぐる回る。

避けるとか避けないとか、いや実際避けてたんだけど。

“避けられるようなこと”って…っ

あんなにわかりやすく態度に表してたんだ、もちろん大志だって何か思ってたとは思う。だけど聞かれても濁してたから、何も知らないんだと思ってた。


大志は私が奏志を避けてた理由を知ってるの?


夕方の教室で言われたあのこと…
でもそれは誤解だったし、違うって話したし。


でも、あれ…?

待って、どこまで知ってるの?

てゆーかそれってまるで…


「私が原因…?」


やばい、なんだコレ…
泣きそう。

私がそうしてたんだ。
私が2人の仲を悪くさせてたんだ…っ!

「芽衣!別に芽衣が悪いわけじゃっ」

「そう!お前のせいじゃねぇーよ!?」

気付けばもう家の前だった。

「…うん、大丈夫!ばいばい!」

「「芽衣っ」」

すぐに家の中へ入った。
2人の顔が見れなかった。

見たらきっと気付かれてしまう。

零れ落ちそうになる涙に。