翌朝、奏志に睨まれたことをわかっていながらも弟の優志に話しかけて学校へ行った。たぶん大志も変に思っただろうけど、しらじらしく優志に話かける姿に何も言わなかった。

そもそも昨日のは私じゃなくて奏志が悪い、私が謝ることじゃないし。

…だから気まずい関係性はあれからずっと変わらず、学校でもどうしたらいいわからないまま1日が過ぎた。

ホームルームを終え、昨日みたいに先手必勝で先に帰ろうと思った。

「芽衣!今日俺部活だから待ってろよ!」

なのに先手を取られた。

「なっ」

「いつも待ってるだろーが」

「でもきょ…っ」

「絶対な!約束破ったら肉まんおごってもらうから!」

有無を言わせない圧力と同時、理不尽な約束を突き付けられた。
私の返事なんて聞かず走って教室を出て行く。

「なんだろうね?あれ…、いつも待ってるじゃんね」

「うん…」

いつも待ってる。

大志と2人、奏志の部活が終わるのを教室の窓からグラウンドを眺めながら待っているのが日常。

わざわざ奏志が言ったのは私が避けてることをわかっていたから。

待つしかない状況を作らされた。

先に帰るとは、それこそ言い出しにくい雰囲気。

みんな部活や帰宅して、2人だけになった教室。
窓際の席に前後に並んで座ってグラウンドを見る。

「ちゃんとサッカーしてるし…」

部活には変わりなく励んでる。
ここから見る奏志はいつもの奏志だった。

奏志はどーゆう想いで私に言ったのかな。

好き…

だなんて簡単に言えるわけっ

髪の毛をぐしゃっとしながら顔を伏せた。

「芽衣どしたの!?」

恥ずかしくて!
自分の事好きなんだとか考えてるの恥ずかしくて…!

冷静に何言ってんの、好きってなんだ!?
私を好きって、自分で何言ってるの!?

「大志!しりとりでもしない!?」

「なんで?」

なんでもいいから考えることをやめたい。他のことで気を紛らわしたい。なんでもいいから。

「じゃあ私から始めるね!えっとーじゃあサッカーの“か”!」

「あのさっ」

「なに?大志から始めたい??」

「…やっぱ俺帰ろうかな」

「え!?なんで!?一緒に待ってよーよ!」

そしたら奏志と2人で帰ることになっちゃう!それはますますどうしたらいいか、落ち着かなくてしょうがない!

「気になってたんだけど…」

「うん?なに…?」

「もしかして奏志と付き合ってる?」

しーんとする教室に嫌に声が響いた。

「え…」

大志の声はとてもよく通るから。

「昨日さ…見ちゃったんだよね。…キス、してるの」