「あ、あっちにワークショップあるぞ!作ろうぜ!」

「やる!どっちが上手くできるかやろ!あとで見せ合いっこね!」

自分だけのオリジナルスノードームが作れる体験に申し込んだ。

ワークショップの部屋の隅にはオリジナルスノードーム作成用の小さなオブジェや飾りが用意され、好きな様に組み合わせて作るシステムだった。

これはセンスが問われる。

スタッフの人の説明を聞いて、お互い好きなものを取り合ってスノードーム作りが始まる。

「めっちゃワクワクして来た!もう楽しい!」

「これ勝負だからな、忘れんなよ」

「制限時間とかあるっけ?」

「特にないけど、30分ぐらいじゃねぇの?」

芽衣と横並びでワークショップの大きめのテーブルに座り、各々作業を始めた。

「奏志とはこうゆう趣味が合うよね、大志とじゃあ来れないもんっ」

「あいつはすぐ飽きるからなー、上手くできないともういいやとか言い出すし」

「基本的に自分の名前入れてるだけだもんね」

「名前書けば自分のものだと思ってるからな!」

はさみで切ったり、糊で貼ったり、こんな工作するの久しぶりだ。どーせならいいやつ作りたい。

「奏志も昔からスノードーム好きだったよね、なんてゆーかたまに趣味が女の子ね」

「誰がだ!!」

くすくすと芽衣が笑っている。

ここを選んだのは芽衣が好きそうだと思ったけど、実際自分も案外好きだったりする。だから一緒に楽しめそうでいいなって思ったんだし。

「少女漫画とか読むじゃん!」

「お前が読めって言うからだろ!」

「でもハマって続き貸してって言ってくるじゃん」

「あ、こないだのやつ新刊出たらよろしく」

「来週出るよ」

なんだかんだ話していたら結構時間がかかってしまって、というか2人とも夢中になりすぎてだいぶ時間をかけてしまった。

30分のはずが倍の1時間かけて完成した。

いよいよ出来上がったスノードームの見せ合いっこ、どちらが上手く出来たかの勝負。
せーのっ!と言う、芽衣の掛け声でスノードームを差し出した。

「私より上手く作られるのは複雑!」

芽衣からのクレームが第一声だった。

「めちゃくちゃ可愛いじゃん、小人がプレゼント運んでるのも可愛いし、スパンコール2色使ってるの!?めっちゃいい!」

口調は怒ってるんだけど、言われてることはすげぇ気分いい。褒め上手かお前。

「私より全然上手いし!!!」

プンスコと口を尖らせて、全然表情と言葉が合ってない。

「じゃあ交換してやるよ」

「え!?」

芽衣が持つスノードームをほいっと取り上げ、俺が作ったスノードームをそのまま返すように手のひらに乗せた。

「なんで!?絶対奏志のがキレイで可愛いと思うよ!?」

「元気欲しい時この歪んだスノードーム見て笑うわ」

「それは背景わざと歪ませてるの!センス!!」

芽衣が作ったスノードーム、センスないわけじゃないけど、下手なわけでもないけど、世界観が強いからなあいつは。歪んだ背景に斜めに建てられた塔、表したいことはなんとなくわからんでもないけど…いやわからんか。

1度逆さにして戻す、キラキラと輝く姿はキレイだ。

「本当にいいの?」

「いいよ、それはお前にやる」

「…じゃあもらう!こっちのが可愛い!」

芽衣も同じように逆さにして元に戻した。
俺の作ったスノードームを。