見渡すと、知らない男性がひとりいる。

「先生、なんとかならないんですか?」

母親が涙声で叫ぶ。

「脳死ってことは、無理だろ」

父親が小さくささやく。

「ねぇ、脳死って? お姉ちゃん死んだの?」

弟が涙声で言う。

「お姉ちゃんは、まだ身体は生きようって頑張ってるんだよ」

「ほんとに??」

「うん。ただね、お姉ちゃんの心はもう天国にいってしまったんだ」

見知らぬ男が話す。

ここは病室のようだった。

状況からして、あの男は医師。


そして、あのミイラ女は、わたしだった。