小林さんっ……?


「派手に落ちてくれていい気味」


なに言って──ウソ……。

もしかして、今までの会話は、全部演技だったの?


「早く行ってゴールしよ」

「行こ行こ」


えっ、ちょっと!


「待って!!!」


そんな声も無視されて、ふたりの足音は遠ざかっていく。

それからどんなに待っても、次のグループが通る気配もなくて。

……やっぱりあのときコースから外れてたみたい。


「そうだ、スマホ!」


ジャージのポケットに手を突っ込んで取り出したスマホをみて、ガックリうなだれる。


「うそでしょ……」


電波がないって……。

これじゃあ助けも呼べない。

落ちたところから、上によじ登ろうとしたけど、足を痛めてしまい思うように動けず。