「俺はそのままの愛乃が好きだよ」



律くん、これ以上私を甘やかさないで。



「これ以上、可愛くなったら嫌だな」



私の肩に顎を乗せた律くんの小さな声が聞こえた。

今でも可愛くないよ。それに。



「理央は美人さんが好きでしょ? 」

「なにそれ。理央が言ってたの? 」

「え、だって。真央くんの彼女は美人さんが多いから、弟の理央も美人さんが好きなのかと思って」



兄弟で思考が似るって言うでしょ。だから、理央のタイプも真央くんと同じだと思うんだ。



「理央、どんまい」



なんで、理央を励ますんだろう。



「愛乃は理央のために可愛くなろうとしてるんだ」

「理央のためっていうか。こないだ、理央に中学生って言われたから。見返そうとしただけで」



理央のために可愛くなろうと思ってるわけじゃないんだけどなあ。



「理央じゃなくて、俺のために可愛くなって」



そう言って、律くんは私の首筋に口づけをした。

チュッとリップ音がして、ときめかないはずがなかった。

相手は律くんで、律くんが甘やかしてくるのはいつものことなのに。

そう言い聞かせても、胸の高鳴りが治まることはなかった。