「安心した? 俺、理央に負ける気しないけど」

「負けるも何も、律も同じだからな」



負けるってなんのことだろう。

二人の会話の意味を考えていると、「愛乃、帰ろっか」と律くんが言った。

三人で帰るのは久しぶりな感じがした。

一週間ぶりくらいなのに、ずっと昔から三人で帰っていないような懐かしさがあった。



「今日も家来るよね」

「お願いします」



律くんの問いに理央に聞かれないように小声で答える。



「このまま来ていいよ」



このままとは制服のままということ。

いつもは一度家に帰って、着替えてから律くんの家に行っている。

律くんに手を取られて、一緒に律くんの家に向かうことになる。

理央が別れ際、不思議そうにしていたけど大丈夫かな。また、何か言われそう。でも、こればかりは本当にバレたくないから。

「バイバイ」と素早く手を振って、律くんを引っ張った。