「彼女のフリです……」

「愛乃は律のこと好きじゃないってことだよな」

「律くんも理央も好きだよ」

「だから……はぁ、ばーか」



理央のデコピンをくらってしまった。

痛い。



「理央、ひどい」



好きって言ったら、ばか呼ばわりされてデコピンされるなんて。

おでこを撫でていると、ふわっと温もりに包まれた。



「愛乃、お待たせ」



肩に律くんの腕が乗せられる。



「理央、愛乃をいじめない」

「べつに。それより、付き合ってるって嘘だったんだな」



それは言わないでよ。



「ごめん、律くん。理央にバレちゃった」

「いいよー。愛乃は隠しごと苦手だし、いつかはバレると思ってたから」



ぎゅーと抱きしめられた。



「それに、付き合ってなくても俺が愛乃を好きなことは変わらないからね」

「私も律くんが好きだよ」



そう返すと、律くんは曖昧に笑って理央に目配せをした。



「まあ、いいか」



律くんの温もりが離れた。