「ね、いるの? 」



忘れないうちに話を戻す。



「いない」



理央はもったいぶるようにためてからそう言った。

好きな人、いないんだ。



「だったら、なんで秘密とか言うの」

「愛乃が知りたいなら教えてあげてもいいけど、愛乃からの質問じゃないんでしょ」



たしかに、これは穂香ちゃんが知りたいことだけど。



「好きな人いないんだよね」



念を押して聞く。



「どうだろ」



また、はぐらかした。結局どっちなの。

とりあえず、穂香ちゃんにはいないと伝えておこう。



「あ、兄貴」



真央くん? え、どこどこ。

理央が指さすほう、道路の向かい側に真央くんが歩いているのが見えた。


「本当だ」

「また、新しい彼女」



理央の言葉に真央くんの隣を見ると、前と違う美人さんが隣にいることに気づいた。