「さっき、審判頼んだよね」



 ラケットを両手でくるくると回す理央から無言の圧を感じるよ。

 初めはカウントしてたんだよ。穂香ちゃんとのおしゃべりに夢中で忘れてたなんて言えないよ。



「理央、ごめん」



 両手を合わせて、目をぎゅっと閉じた。

 怒ってるよね。

 ちらりと理央の顔をみようとすると、頭に重みが加わった。それは律くんの手だった。そのまま、律くんによしよしされた。律くんはよく、私の頭をなでる。小動物扱いなのかな。



「こっちでカウントしてたから、大丈夫だよ」



「だよね、私が審判しなくてもどうせそっちで数えてたんでしょ。そのくらいわかってるから」



 だから、私はカウントしなかったんだよ。二人のほうでカウントしていたとわかっているフリをして、胸を張る。



「ばーか。本気で焦ってただろ」

「いったーい」



 理央にデコピンされて思わず、おでこを押さえる。



「愛乃ちゃん、大丈夫? 」

「うん、平気」