理央は彼女たちに声をかける。



「いいのー。ありがとう」



彼女たちの声が高くなるのがわかった。



「斎さん、ちょっと松吉君借りるね」



理央と彼女たちは少し離れた机まで行った。

私が行っていいと言ったのに。理央と彼女たちの距離が近くて。

広げたノートは白いまま。問題に目を通しても頭が動かなかった。

理央たちのほうを見ないように問題とにらめっこする。



「なるほどー。ありがとう」

「先生より教えるのうまいかも」

「どういたしまして」



もう終わったのかな。

一問も進んでないこと理央に知られたらなんていわれるか。



「お待たせ」



彼女たちが教室を出て、理央が戻ってきた。

理央が私のノートに視線を落とす。



「進んでないじゃん」



バカにされるかな。



「わかんないとこあった? 」



いつもよりも優しい言葉が私の何かを壊していく。

彼女たちに教えている理央を見て、もやもやがかかっていた心が晴れていく。