「愛乃、手止まってる。わからないとこあるの? 」



わからないのは、自分の気持ちです。

律くんと一緒にいるところを見られて、キスされそうになったところを理央に見られて、もやもやしてるこの気持ちの正体がわかりません、理央先生。

なんて考えつつ、問題集の番号を指さして理央に見せる。



「どれ」



近いよ。

理央が体をずらして私の横に来る。確かにこっちのほうが見やすいかもだけど。ちょっと動いたら、肩が触れそうな距離で、体が固まる。



「これは――」



理央が丁寧に解説してくれているけど、左肩に意識がいって理央の言葉が耳に入ってこなかった。



「愛乃、聞いてる? 」

「ごめん、もう一度お願い」

「何考えてたわけ」



なにって。理央のことだよ。



「だって、理央が近いから」

「なにそれ」



予想外だというように理央が目を丸くする。



「俺が近くにいると不都合なの」

「そうじゃないよ」



ただ、意識しちゃって。

否定しても理央は拗ねたように続けた。