「ここは理央がいないときにね」



律くんの指がちょん、と唇に触れる。

呆ける私を置いて、律くんはなんでもなかったかのように勉強の準備を始める。



「理央も来たことだし、はじめようか」



このまま始められないよ。

理央が律くんを睨んでるし、不機嫌オーラ全開だよ。

律くんは理央の視線なんかお構いなしに、床に座ってシャーペンを走らせる。

理央は私の隣に座る。



「愛乃」



不機嫌な声で呼ばれる。

なんで、律にキスされてるのかと攻めてくる理央の声がそこに含まれているようだ。



「私も、勉強しよっと」



急いで、鞄から問題集を取り出す。理央もしぶしぶと隣で勉強し始めた。

問題にとりかかろうとするも、全然頭に入ってこない。

ちらりと、理央に目を向ける。理央は乱暴に頭をかいてペンを走らせていた。

私のノートは真っ白のまま。一問も進んでいなかった。