「誰かさんが急いで帰るから、一緒に帰れてないんだけど」



ごめんなさい。でも、そもそも理央のせいなんだから。

まだ、キスしてきた理由を聞けていないことに気づいた。



「わかったから。今日は一緒に帰るから」

「今日は? 」

「これから。もう、避けないから」



私の答えに満足した理央は、掴んでいた腕をはなした。

「じゃあ、帰ろ」と、理央は背中を向けて教室に戻ろうとする。



「待って」



今度は私が理央の腕を掴んで引き止めた。



「一つ、聞いてもいい? 」



理央は振り返って、私の言葉を待つ。



「あのとき、なんでキスしたの? 」



ずっと、聞きたかったことだ。律くんは、自分の気持ちに気づいてほしいからと言っていたけど、理央はどうなんだろう。

理央は片手を首の後ろにあてた。



「お前が、俺は佐伯さんが好きだって勘違いしてたから」



理央が好きな人は穂香ちゃんだって私が言ったから、私にキスしたの。

よくわからないよ。