小学生のころは三人で一つの傘をさして帰ったことがあったことを思い出した。三人で一つの傘を使うことは無謀で結局全員濡れて帰ったんだったかな。

律くんが傘を傾けてくれているおかげで、私には雨粒はかかっていない。

濡れて帰ったあのころが懐かしいと思ってしまう。ここに理央がいないことが昔のままではいられないと示してくる。



「律くん、肩濡れてる」



傘からはみ出た肩の部分に染みができていた。



「俺は大丈夫。貸してもらってる側だから」



「それじゃあ、風邪引いちゃうよ」



「愛乃ほどやわじゃないけど」



依然私のほうに傘は傾いたままだった。

せっかくの律くんの好意だけど、そもそも律くんの傘がなくなったのは私のせいでもあるから濡れてほしくはない。