私がぼんやりと秋葉を見ていると、急に秋葉がクルリと振り向いた。

 バチリと目が合う。

 心臓が大きく跳ねた。

 すると秋葉は、ニヤリと笑って私に向かって親指を上げた――ような気がした。

「きゃあああああああっ!!」
「今の、こっちに向かって笑ったわよね?」
「私によっ!」
「いえ、私によっ!」

 私の周りの女子たちがパニックになる。

「へー、秋葉くんがファンサービスするなんて珍しい。花帆がいるからかな?」

 ニヤニヤする莉茉ちゃん。

「ま、まさか。偶然だよ」

 そんなやり取りをしていると、試合が終わり、秋葉たちがこちらに歩いてきた。

「秋葉くん、これタオル、使って!」
「ずるい、私があげるのっ!」
「秋葉くーん、飲み物どうぞ」

 秋葉の元へ駆け寄る女子たち。

「あー、俺、そういうのいいから」

 そう言いながら、秋葉は、女の子の群れをかき分けてこっちにずんずんと歩いてくる。