【完】溺愛体質の彼は私に好きと言わせてくれない

「そりゃあ仲間に聞いても分からないはずだ。お前ら昔から惹かれあっていたんだな。羨ましいな」





そう、だから私が初めて見た配信は昴さんが作ったもの。







忘れてしまったのは今となってはどうして覚えてなかったんだろうって思うけど。






「だから私の“好き”は昴さんから始まったんだ。そのきっかけが無かったら、私は楽しいと思えることに出会えなかったし、明星くん…八雲くんにも会えなかった。昴さんがきっかけをくれたから私たちは会えたんだよ」







忘れていたからこそ、また巡り会うことが出来て新しい恋の花が咲いたんだ。

「俺もまた依乃里に会うことが出来てとても嬉しい。もちろん八雲くんにも。なんだか二人が羨ましくなってきたな」





「なんだ?俺を尊敬し始めたか?」






「まぁな。俺は趣味とかないから好きなことを楽しんでいる二人を尊敬する」






その時だけは素直に慣れたのかこの日初めて八雲に素の笑顔を見せることができた。






「昴さんもすぐに見つかりますよ。楽しいと思えること。私も一緒に探します…!」






「いや、もう見つけてた」






「え?」





ふっと笑い、依乃里の方に体を向けてその答えを話す。






「依乃里といれる時間が俺にとって、好きな時間で楽しいと思えることだ」
昴さんが私に好きと楽しいを与えてくれたように、私も昴さんに与えてたんだ。





不思議?それとも偶然?どちらでもない。これは多分運命だ。






「お前ら、俺もいること忘れてねーよな?何回このくだりやるんだ…」





「あ…!ごめんね八雲くん」






「まだいたのか。早く帰って自分を見つめ直してろ」





「ホントあんた、いい性格してるよな!?」






あはは。仲がいいのか悪いのか。






いつか八雲くんにも好きと想える人、新しく楽しいと思えることが見つかりますように。


バレンタインが終わったら次はいよいよ春!





あっという間だった高校一年生も終わって、次は高校二年生になります。






後輩が出てきて私もそろそろしっかりしないといけません。






その一環として今日は高校の説明会のお手伝いをします。もちろん昴さんや八雲くんも一緒です。






学校の生活についての動画は八雲くん作りました。






動画クリエイターとしての本領も発揮して、皆からの株がまた一段と上がったとか。







残念ながらナレーションには参加しなかったみたい。





そうだよね。声で明星タイムって分かっちゃう人もいるかもしれないし。
「榛名さーん!」





依乃里に飛び込んできたのは同じクラスの松島佐恵香。





説明会で使う道具を持った谷本真帆も佐恵香の後を追ってきた。






「松島さん、谷本さんも。二人も説明会の手伝い来てたんだ」






「うん。これに参加すると内申点貰えるって聞いたから。佐恵香そろそろ離れな?榛名さん困ってるよ」







「はーい。そういえばさ、榛名さんって一ノ瀬先輩と付き合いだしたってほんと?」







「え、あ…うん」







噂、やっぱり広がってたんだ。






でもこの二人ならSNSに書き込んだりしないと思うから話しちゃってもいいかな。
「なんて言うかさ、お似合いだよね!二人って」





「えっ?!」






「うん。美男美女カップルだし。元から二人は両片思いって感じだったから噂で付き合いだしたって聞いてこっちまで嬉しくなったよ。おめでとう」





「おめでとう榛名さん!」






佐恵香と真帆に祝福されて、改めて昴との関係を実感した依乃里。






「ありがとう松島さん、谷本さん」







「ていうか、佐恵香でいいよ。もう友達なんだから」






「そうそう。これからはなんでも遠慮なく相談して。女子同士なら話しやすいことだってあるだろうし。私のことも真帆でいいから。依乃里」
「うん!よろしくね佐恵香ちゃん、真帆ちゃん」





思えば高校で女の子友達は二人が初めて。二年生になってもこの二人と同じクラスになれるといいな。






椅子並べを終えて次の作業に向かった依乃里。その途中、昴と合流して作業状況の情報交換をする。






「依乃里。そっちは終わった?」





「終わったよ。昴さんの方は?」






「マイクもスピーカーも問題なし。プロジェクターは八雲が調整してるから大丈夫だろう」







「機材に関しては八雲くんが一番だね」





いつも機材に触れているから知識はこの学校の中でピカイチだろうし。






挑んでいることが役立つ瞬間って最高に気持ちが高ぶるよね。






「俺も機材に関しては知ってる方だと思うけど?」
依乃里の指に自分の指を絡めて顔を近づけておでこをコツンとした。






「ちょっと昴さん。ここ、学校…。誰がに見られたらどうするんですか?」






今だってこんなに恥ずかしいのに。






手全然話してくれない。おでこもずっとスリスリとしてくるし。熱出てきそう///






「依乃里が悪い。ちょっと嫉妬したんだけど....」







そうか。私が八雲くんが一番って言ったから。ちょっと可愛い。






「私の中では昴さんが一番ですよ。それだけは変わりません」
変わらないよ絶対に…。






説明会が始まり、在校生の進行で校長先生の話や生徒会長の話を終え、いよいよメインイベントの説明会VTRが始まる。






『では、ここからは学校紹介VTRを観ていただきましょう』






生徒会長の合図で会場である体育館の電気が消され、スクリーンがおりてきた。






私たち在校生も説明会終了まで一緒に待機することになっている。






八雲くんが作った動画、どんな感じなんだろう。配信とはまた違う明星タイムのオリジナル。楽しいに決まってる。







一人ワクワクしている依乃里。しかし、いつまで経ってもVTRは再生されない。