「言われてみれば、ここまではしたこと無いな」とポツリと呟いた西田さんは、自ら腑に落ちたように「そっか。好きな子には束縛しちゃうタイプだから。俺、優羽のこと好きなのかも」と続けた。


「はい?」


 西田さんの言葉に思わず耳を疑う。


 今、何と言われました? 私の耳が確かなら、あなたが私を好きだと言ったんですか?


「元々、いい! と思ったから優羽を指名したわけだし。仕事相手として適任だと直感したからで。そこは今迄の仕事相手も同じだけど、仕事外でも接点を持とうと思ったのは優羽だからで。ということは、結論から言うと俺は優羽のことが好きってことでしょ?」


 自分の気持ちを口に出して、最後に疑問符つけるって。どうなのよ? その質問に私が答えるの?


「知りませんよ、西田さんの心の中なんて」


 思わずつっけんどんな返事をしてしまった。仕事相手として選んでもらったことは光栄なことだけれど、私達は知り合って間もない。個人的に好意を持ってもらう程、お互いのことを知っているわけじゃないのだから。

 きっと西田さんの勘違いだ。

 冷静に思いつつも、戸惑いを隠せない私に気を使ってくれたのか。西田さんはハンドルを握り、視線は前方に向けたままで話題を変えてきた。