「次の仕事があるって、マネージャーさんが話してましたよね?」

「うん。でも優羽を送って行きたかったから」

「……バカじゃないの⁈ なにしてるんですか」


 マネージャーさんがさっき言っていたばかりじゃない。今後の評価が下がれば、この業界を干されると言われたばかりなのに。


「私より仕事の方が何百倍も大切なのに! 早く戻って下さい」


 嬉しいけど嬉しくない。こんな複雑な気持ちは初めてで、自分自身でも訳が分からなくなる。
 ただ、当の西田さんよりも動揺し慌てているのは私、ということだけは確かだ。


「大丈夫。次の仕事は優羽の会社の近くだし、通り道だから」

「嘘! うちの会社の周辺には、テレビ局もスタジオも無いもの。戻ってマネージャーさんと合流して」


 ここで降りる! とシートベルトをガチャガチャと外そうとした私の手を止めた西田さんは、穏やかな口調で言った。


「落ち着いて。優羽や他のスタッフの手前、仕事だと言っただけで。本当はプライベートな用事なの、マネージャーとは元々さっきのスタジオで解散予定だったから、問題ないんだ」

「でも、だからって西田さんに送ってもらうわけにはいかないです」