「今日はありがとうございました」


 撮影を終えた西田さんとマネージャーさんにお礼を告げ、スタジオを後にする。
 腕時計に目を落とすと、もう午後四時半。随分長い時間、西田さんと同じ時を過ごしていたことに驚いた。実際に感じていた体感時間は、もっともっと短く感じていたから。


「それにしても、あっという間だったなぁ」なんて独り言を呟きスタジオの廊下を歩きながら、窓から差し込む夕焼けに目を向ける。オレンジ色の柔らかな夕陽が頬を温めた。

 エレベーターで一階に下りスタジオを出ようとした時、腕を後ろから誰かに掴まれ。ビックリして思わず声を上げそうになった私の口元を塞いだ手と共に耳元で囁かれた。


「優羽、会社まで送る。駐車場までダッシュできる?」

「え? えぇっ⁈」


 強引に私の手を引き、走っている西田さんの背中が目に飛び込み。この状況に驚きながらも足はしっかり交互に前に出ていた。

 地下駐車場に駐車してあった車に乗り込むと、西田さんは速攻でエンジンをかけ車を発進させた。
 勢いよく地下駐車場から路上へ出た車は、そのまま大通りを走り去る。まるで、追われている犯人のようにルームミラーを確認し、後ろを気にしている西田さんに訊ねた。