「いいですよ」

「やった」


 時間も気になるし、マネージャーさんが一緒じゃないことも気になる所だけれど。車の往来も激しくない森林の中を走っている為、対向車はほとんどないし。
 きっと西田さんが向かっているレストランだって、元々お忍びで行こうとしていたのだろうから、平日のランチタイムに大勢の人が居るとは限らない。
 それに。私自身が西田さんと一緒に行ってみたいと思ってしまったから。

 森林の中にポツンと佇むレストランは、うちの本社屋に少し雰囲気が似ていた。
 白壁には蔦が絡まり、赤いとんがり屋根。焦げ茶色の窓枠から店内のライトが漏れている。

 駐車場に車を停めた西田さんは運転席から降りると助手席側に回り込み、ドアを開けてくれた。
 こんなに女性扱いされたのは、いつ以来だろう。


「外観もいい感じだなぁ、いこっか」

「はい」


 西田さんの後についてレストランのドアに向かう。ドアノブに手をかけた西田さんが振り返り「どうぞ」と、私を先に店内へと誘導した。

 店内に足を踏み入れると、なんとも言えない空間が広がっていて。思わず「わぁ素敵」と声に出してしまう。

 案内された席に向かい合って座り、メニュー表から本日のおすすめとされていた、ビーフシチューとBLTサンドを注文する。