「それより、今は二人だけなんだし。普通に話して」


　予想もしていなかったひとことを告げられ、ドキッとする。
　確かに今はマネージャーさんもいない空間で、二人きりだけど。こっちはそれを意識しないようにしていたのに。


「そういう訳にはいきません、仕事相手ですし」

「仕事相手じゃなければいいの？　じゃあ、H＆T㏇との仕事を降りようかな」

「はぁ？」


　何を言い出すのかと思えば。さっき目の前で繰り広げられていた、西田さんとマネージャーさんの痴話喧嘩のようなことをしようと、ワザとけしかけてるのかな。
　でも、ホントに再現するわけにもいかない。第一西田さんは仕事上我が社との契約相手なのだから。


「俺がいいって言ってるんだから、いいの」

「そう、ですか？」

「そうだよ」

「……じゃあ、えっと。どこまで行くの？」


　思い切って口にしたわたしの言葉を聞き、一瞬西田さんの口元が緩むとゆっくりと切り出された。


「前から行ってみたいと思ってたレストランがあるんだ。せっかく優羽と一緒にランチするなら、そこに行ってみようと思って」


「ダメ？」と助手席に座る私の反応を確かめようと、前を向いていた西田さんが顔を左に向けた。