予定していた打ち合わせを終え「親睦を兼ねて」とマネージャーさんからランチに誘われた私は、上司に連絡を取り午後からの仕事予定を変更する許可を得てランチにも同席することになった。


　なのに。出発直前、マネージャーさんは別の仕事が入ってしまい。用事が片付き次直接スタジオへ向かうと言い残され、急遽マネージャーさん抜きでランチへ行くことになってしまったのだ。

「二人きりで行ってもいいのだろうか」と思いつつも、西田さんが運転する車の助手席に座っていた。


「西田さん、どこに向かってるんですか？」

「昼飯食べる場所」


　ハンドルを握る西田さんの横顔を「綺麗だなぁ」なんて見とれてしまいそうな気持ちを抑え。窓の外に目を向ければ、既に景色が変わっている。

　てっきり撮影するスタジオに近い場所でランチを取ると思っていたから、目の前に広がる森林から時折差し込む日差しが眩しい。


「こんなところまで来てしまって、撮影時間に間に合うように戻れるんですか？」

「大丈夫だって」


　時間を気にする私に、全く気にしていないらしい西田さんがハンドルを握り視線は前方に向けたまま話し出した。