オロオロしながらスマホを片手にその場でグルグル回ってみる。ナビの矢印的には、この道で合っているはずなのに。


「優羽、こっちだよ」

「あぁっ、西……」

「しぃぃ――っ」


 迷子状態だったため聞き覚えのある声を耳にした途端、周囲の目があることさえ忘れ。顔を見るなり不安が解消されホッとしてしまい。その名を口にしかけた私は、唇に人差し指を当て「それ以上言わない!」とデスチャーしている西田さんに助けられた。

 電柱の影から少しだけ顔を出し「こっち、こっち」と手招きしている西田さんに向かい、まるでご主人さまを見つけたペットのように駆け寄る。


「やっぱり迷子になってた」

「西田さん、どうしてここに? 事務所はもう少し先ですよね? 私が迷子になってるって、よく分かりましたね」

「なんとなく優羽が迷子になってる気がしたんだよね。途中で待っててよかった」


「俺の予想、大当たりだった」と笑う西田さんは、得意気な表情を浮かべ無邪気な笑顔を私に向けた。そして私の顔を覗き込むと「ははっ、半ベソかいてる」と親指を当てられ、そっと目元を拭ったのだ。


「このまま永遠に事務所へ着けないかと思いました」