そう切り出した裕隆さんはやはり身代わりとしてではなく、裕隆さんとして仕事がしたくなっていたことに気付いたというのだ。

 わざわざ私などに電話してきて話す位なのだから、これは「もう隆好の代役は絶対にしない」という宣言なのだろう。
 近いうちに自ら社長に掛け合ってみると言って電話は切れた。

 何時の間にキッチンから移動していたのか、ソファの背もたれに両肘をかけ顎を乗せ「電話、長かったね」と、私が電話している様子を眺めていた隆好から声をかけられた。


「そう?」


 悟られないようにその場を上手く受け流そうと短く答える私に、何やら疑いの視線を向けた隆好から尋ねられた。


「誰から?」

「会社の人」


 社長との話し合いの結果が出るまで、そして裕隆さん自ら隆好に話すと言っていたことだから。この話は聞かなかったことにしようと決め隆好に嘘をついた。


「ふーん。相手、男?」


 まずいな。このままだと誘導尋問に引っかかって、すぐに嘘がバレてしまいそう。
 けれど、なんだか隆好の様子がおかしいことに気付く。
 上目遣いで私を見上げている隆好は怒っているというより、どちらかというと……。