「後に残ったらどうしよう」

「プッ、大げさだよ」


 隆好の態度に思わず吹き出してしまった私を見て。安心した表情を浮かべた隆好は、私の身体を抱き寄せた。


「どうしたの?」

「せっかく一緒に居るのに、優羽のことほったらかしにしてて。ごめん」


 あ、ちゃんと自覚していたんだ? 気にしてくれては、いたんだね。ちょっとは「悪いな」って思ってくれていたのか。

 どうしよう。今の言葉を聞いてしまったら全て許してしまいそうになってる。
 さっきまで寂しい思いを抱えていたのに……。


「さっきから謝ってばっかり」と呟いた私の顔を覗き込み、小首をかしげ「そうかな?」と確認する隆好の顔が素顔過ぎて嬉しくなる。


 こんな表情、誰にも見せないでほしいな。例え演技でもみせてほしくない。私だけに見せてくれる特別な顔であってほしい。


「そうだ、明日は俺が出社するから。一緒に居られるね」

「隆好は副社長室でしょ、私は普通に職場勤務ですから」


 いくら社内に居たって一緒に居られるわけじゃないよ。と諭すと。とんでもない答えが返ってきた。


「なら、俺の秘書でもすればいい」